◆プロジェクト概要
中部サステナ政策塾は、国連大学認定「中部ESD拠点協議会」(幹事機関:中部大学)が主催する人材育成プロジェクトです。
2016年度から、20~30代の若者を対象に、サステナビリティ(持続可能性)に関する政策を学ぶ講座を実施しています。
中部ESD拠点に関する情報はこちらから。
目的:持続可能な地域のための政策立案・提言ができる人材(ポリシー・メーカー)を育成します。
講座:ゲスト講師による講演とディスカッションなどの座学、地域でのフィールドワークを実施します。
講師:政治家・学識経験者・企業家・NPO関係者など、第一線で活躍する多彩なゲスト講師を迎えます。
期間:座学とフィールドワークの合計10回を予定しています。
◆政策塾が提言する課題・問題点
①ポリシーメーカーの質的・量的不足
持続可能な社会のための政策立案・提言ができる人材をポリシーメーカーといいます。
さまざまな要素が複雑に絡み合う現代社会のローカル・グローバルな問題の解決には、総合的でバランスの取れた視点や判断が不可欠です。しかし、現代社会では、専門分野の細分化による総合的な決定能力の低下、イデオロギーの二極化による調整能力の低下、経済偏重主義による環境政策の低迷など、持続可能な社会を実現する人材育成を阻む要素に満ち溢れています。とりわけ、政策提言を行う能力を持った若者の育成は質・量共に極めて乏しいとされます。
②新規性の高い魅力的なESD活動の不足
ESD活動は、対象とするテーマや主体、あるいはグローバル/ローカルといった対象地域の階層が多岐にわたるため、体系化が難しいとされます。そのため、旧来の環境教育や開発教育の活動内容を踏襲するだけの教育がESDとして取り上げられ、ESDの持つ相互関連や総合性という側面が見落とされることがあります。その結果、地域の多様性を尊重した、自然・社会・経済の総合的で魅力ある学びの仕組みづくりとその普及が困難を極めています。
③ESDの国際的認知度の低さと主流化に向けた意識の低さ
持続可能性(サステナビリティ)に関する国際的な議論は、国連SDGsの開始に見るように高まりを見せている一方で、日本政府が提唱して実施に至ったESD(ESDの10年)の知名度は低くなっています。SDGsの17項目すべてのテーマに関わる教育(ESD)を主流化させることがSDGsの達成に不可欠ですが、現状ではその重要性が認識されておらず、今後、ESD提唱国の日本が果たすべき役割は大きいとされます。特に、地域・国内・国際的に、さまざまな場面で政策提言を行うことのできる若い人材が、提唱国から多数輩出されることが望ましいですが、現状では実現されていません。
◆課題解決に向けて
①人材不足への対応
持続可能な社会づくりを企画・立案・推進する人材(SDポリシーメーカー)の育成を、約60人の若者(20~30歳代)を対象に行います。
受講者を決定する際には、政治・行政・企業・教育機関・NGO等の各セクターからバランスよく選抜し、育成プログラムでは、各分野の第一人者(これまで中部ESD拠点のネットワークで培った人材)による講義等の座学、伊勢・三河湾流域圏を活動対象地としたフィールドワーク、グループ討議や熟議を行うワークショップ、外国人とのディスカッション/ディベートなどを行います。
講師陣は、中部ESD拠点のコアメンバーである複数の省庁出身者(環境省・国交省・文科省・外務省)や政治経験者、各種政策提言に関わっている専門家・研究者が担当します。
また、東海3県(伊勢・三河湾流域圏)でSD活動を実践しているNPOリーダーや教育者を、「特別講師」として任命します。
参加者は学習者であると同時に、ユネスコのESD/GAPの実践者として国際交流を行います。
②新規性の高い魅力的なESD活動の不足への対応
中部地域では、「流域圏」を単位とした地域理解を通したESDの推進手法をこれまでに開発してきました。生活基盤である流域圏の固有性を理解することは、他国・他地域の自然環境の固有性を尊重することにもつながります。こうした「流域圏ESD」の体系化を更に進めると同時に、地域課題と直結したESDの学びを上記受講者に提供します。
多様な主体との連携による総合的な地域課題解決にむけたESDプログラムは、ネットワーク団体ならではの人材育成方法です。
③ESDの国際的認知度の低さへの対応
中部ESD拠点は、「ESDユネスコ世界会議」本会合(公式ワークショップ・コーディネーター)の活動実績が評価され、日本のESDネットワークNGOで唯一、ユネスコのESD/GAPのキーパートナーの認定を受けて活動を展開しています。この立場を活用して、国際的な情報発信・交流では、流域圏ESDの手法を通じて、他国の自然・社会環境の理解を深める交流を行い、SDGsの実現に向けた連帯感を醸成します。中部ESD拠点加盟団体であるNGOや大学を通じて参加者を広く募集し、優秀な人材を選抜する予定です。
◆最終目標
①最終的に実現したい望ましい環境の状態(上位目標)
地域の課題解決能力を有し、地球規模の諸課題を解決するグローバルな連帯に向けたSDGsの取り組みを推進できる人材(広義のポリシーメーカー)が創り出す、ローカル・グローバル両側面で、環境・社会・経済の調和のとれた発展を続ける、持続可能な社会の状態。
②上位目標の実現に寄与する本事業の望ましい成果(アウトカム)
上記目標の実現に寄与する本事業の望ましい成果として、次世代を担う青年がSDの実現のための方針や原則(ポリシー)を総合的な判断力から理解・確立し、自身で各種事業を企画・立案・実施・評価ができるようになること。そして、東海・中部地域でSDおよびESD活動を実践する多様なステークホルダーの連携による支援を受けながら、彼らが、果敢に政治家や起業家などに挑戦することです。
「ポリシーメーカー育成塾」の数値目標は、政治家では2019年の統一地方選に中部地域の自治体の首長・議員選挙に計5人が立候補すること、起業家では3年間で10の社会企業(営利・非営利)が起業すること、その他、上記能力を備えた行政官、教育者、企業人(営利・非営利)45名が育成されることです。
これらの人材が、育成塾の学びを通して、地域(ローカル)課題の解決能力と、国際的(グローバル)な交流・協働の能力を得ることで、環境・社会・経済の全ての視点から調和のとれた地域発展に寄与する政策立案及び決定を行い上位目標を実現します。