開催日:7月19日(木)
演題:「地域の生態系とサスティナビリティ
~琵琶湖・淀川水系のガバナンスとの関係で~」
講師:嘉田由紀子(元滋賀県知事、元環境社会学会会長)
成果報告:
第2回講座は、2018年7月19日に、嘉田由紀子氏を講師に迎えて開催された。演題は「地域の生態系とサステナビリティ~琵琶湖・淀川水系のガバナンスとの関係で~」。嘉田氏が、研究者として「水と人間の共生」を論じ、滋賀県知事として行った防災対策等のさまざまな具体例を紹介することで、あるべき流域ガバナンスとは何かを考えるヒントを提示してくださった。
<第一部 講演>
元滋賀県知事である、嘉田由紀子氏による講演が行われた。はじめに、嘉田氏が水と人間の共生を勉強するきっかけについての話があった。そして、勉強の成果として、環境問題への3つの立場と水と人との環境史についてお話しなさった。
そのお話の中で、水に対する防災対策の具体例として実際に滋賀県で行った対策を例として挙げていた。また、西日本大水害の教訓として、地域ごとでの避難体制の議論や訓練の違いについてもお話しなさった。
最後に、現代社会の現状を見て、あるべき流域ガバナンスとは何かについていくつか提示してくださった。
<質疑応答>
Q 水道普及が水害の直接的な原因になりうるのか。
A 直接的な原因ではない。しかし、水道の普及により、川や水場への関心がなくなり、「近い水」から「遠い水」になってしまった。
Q 日本は災害国だが、なぜ防災省がないのか。
A 国の政策として足りないのが、防災省と家族省であると考える。自身が知事として最初に作ったのが防災危機管理局と子供少年局、いわば防災省と家族省である。
<第二部 グループディスカッション>
講師、塾生、サポーターで3つのグループに分かれ、討論を行った。
住民ができること
①防災において、自分にできることを行い、助け合うといった、自助・共助・公助をすること。
②地元住民が危機意識を持って、防災情報をきちんと把握すること。
③地元住民が地域の特性を理解し、災害が起きても安全が確保されているという地元の売りをつくっていくこと。
行政の役割
①ハザードマップなどのリスク情報を正確に住民に周知するために、地域住民が考える場を提供すること。
②行政が災害時に危ない地域の土地を買ったり、危険な地域の売買には条例で強制力をかけるなどすること。
③多額の資金を要する堤防の設計・建設を実現可能にするために、行政は地方に権限を委ねること。
持続可能にするために必要なこと
①行政、住民、企業といった地域に関わる全ての人達が自分事化していくこと。そのために、BCP(Business Continuity Planning、災害時、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画)を組織的に継続することが大事であるということ。
②住民が普段から水に親しみ、災害や水の在り方を学校教育にも取り入れていくこと。
住民の意見を行政に反映できるよう、地元住民と行政が継続してコミュニケーションをとること。