第5回「ディーセント・ワーク:人間らしい、働きがいのある仕事」

開催日:10月18日(木)
場所:中部大学名古屋キャンパス(6階大ホール)
講師:原田さとみ(エシカル・ベネロープ㈱代表取締役)
   戸田友介(株式会社M-easy代表取締役)

成果報告

 会のはじめに、塾生のファシリテーターから、今回のテーマに関連するSDGsの内容と日本が抱える現状課題の説明をしてもらった後、2名のパネリストをお迎えして、塾生参加型のパネルディスカッションを行った。

<塾生による導入>
 塾生のファシリテーターである松田玲奈さんから日本の労働現場を取り巻く環境についての話があった。現代の労働人口が減り続けている傾向にある。
 人材のグローバル化は優秀な人材が海外へ流出している一方、国内における外国人労働者の数が年々増加していること、他に今ある仕事がAIに置き換えられる未来が近いこと。これらをどう乗り越えられるかという話であった。

<第一部 パネルディスカッション~前半~>

 エシカル・ベネロープ㈱取締役である原田さとみ氏は、フェアトレードショップの運営、名古屋で「フェアトレードタウン」を推進する団体の代表としての活動などを通じて、途上国を支援している。
 今回の話の中で、JICA(国際協力機構)の取り組みについて、具体例を挙げていた。エチオピアやラオスでは、女性が機織り機や手仕事でフェアトレード商品を生産している。しかし、近年商品用の素材の天然染料が手に入る土地の買収、森林伐採が問題だ。
 最後に、日本の現状、働くことについて、暮らしの中で生活にかかわるものが、どのようにして私たちのもとへ届くのかを考えなければ、なんのために働くのかも見失っていくことにつながるのではないかという、主張を踏まえて話していた。

 <質疑応答>
私は持続ということが大事だと思っており、フェアトレードの概念の一つでもあると思うが、原田氏がフェアトレードにかかわるきっかけとなったことや続けている原動力はなにか。
A タレントや自分の店を経営するなど自由に生きてきたが、自分が母親になり、息子が3歳になったころ、過酷な状況で働かされている途上国の児童労働に関する記事を読んだ。フェアトレードのチョコレートは、それを是非するためにあるという話に心を打った。自分の子供には甘いチョコレートを食べさせているその裏側で、全く真逆の悲しい現実があるということに衝撃を受けたことが、フェアトレードに携わることになったきっかけである。

<第一部 パネルディスカッション~後半~>

 株式会社M-easy代表取締役である戸田友介氏が、「みんなで生き残る働き方」について話があった。最初に自身の活動の紹介をしてくださった。その活動の中で実際にあった移住者の実話例を挙げていた。その後、今回のテーマである「働く」をつくるために3つの「重ねる」があると主張し、それについて話をしてくださった。
 木の駅プロジェクトにも触れて話を進めていた。木の駅プロジェクトとは、通常、木々を山から運び出すには、業者に依頼する必要があり、経費が掛かる。そこで、地元の人々に気を運び出してもらい、地域通貨を対価として支払うシステムである。

 <質疑応答>

稼ぎから暮らしに重点という価値観を置いたタイミングと趣が変わった理由を教えてほしい。

A 選択肢が他になかったからである。ゼロから組み立てられるということに気づいた。暮らしの上では、まず地域や自然があり、そして、自身がやりたいこと・やれることと社会との接点にお金が生まれる。いくら社会のニーズを捉えられても、マーケティングをしても、技術があってもできることではない。

Q 「木の駅プロジェクト」について、具体的にどういう仕組みになっているか知りたい。
A 木1トンに対して6,000円という基準を設け、「モリ券」という地域通貨を受け取ることができる。集めた木は1トン3,000円でチップ会社に売られ、残りの3,000円分は寄附や志で埋めるという仕組みになっている。他の地域では、行政の予算で補っているが、旭地区でははじめの3回まで地域住民の寄付で賄い、その後、薪販売や用材販売など、知恵をしぼって販路を広げたり、地域のみんなで支えていくにはどうすればいいか日々考え続けている。

<第二部 グループディスカッション「働くとは、生きがいのある仕事とは」

講師、塾生、サポーターでグループに分かれて討論を行った。

〇仕事で自分を必要としてくれる人がいる。何かをしたときに、喜んでくれる人が目の前にいて、それを実感できるとき。逆に、作業をこなしているときや、大きな仕事の中の切り取られた部分だけをやっているとき。

〇他人の役に立つことであると思う。他人とは高齢者や子供、地域や社会のことを指し、その方々の変化がみられることが働きがいにつながる。自分のやることに対して慎を一本持って働くことがも大きな要因だと考えている。

〇好きなことに没頭して仕事をする=お金稼ぎ、になるとは限らない。楽しようと思って好きなことをして、少しでも楽しようと思って夜も寝ずに頑張ることにつながることがあるかもしれない。

〇仕事の時間=お金を稼ぐ時間となると、とてももったいないと感じる。お金をもらう以外に相手に喜ばれる、地域で一緒の時間を共有できるなど、様々なことが積み重なって、その時間を有効に使えるようにしている。